「まあ、涙は止まったようでなによりだ。ほら、戻るぞ」

「はい」


私は傘を差してくれる葉山先輩と一緒に射場に戻ると、濡れた身体を拭くために棚からカバンを取ろうとした。

そのとき、頭になにかが被 かぶ せられる。


「わっ、なに!?」


驚いて頭に乗っているなにかを取り払うと、それは紺色のタオルだった。

後ろを振り返ると、葉山先輩が私の使っているのと同じ種類のシーブリーズを首筋に塗っている。


「それ、洗い立てだから」

「でもっ、葉山先輩のですし……」


先輩のタオルで身体を拭くなんて、図々しいうえに申し訳ないというか……。

洗って返すというより、新しいのを買い直して返さないと。


そんなことを考えていると、葉山先輩はしびれを切らしたように私のところへやってくる。


「貸せ、そのままじゃ風邪をひく」


私の手からタオルを奪い取って、代わりに髪を拭いてくれる葉山先輩に一瞬だけ思考が停止した。


どうして、こういう展開に!? 


恥ずかしさの波がじわじわと押し寄せてきて、私はうつむく。