「……そうだな。六実、弓を構えろ。それから会の状態になれ」

「は、はい」


言われたままに、私は会――弓を引き絞った状態になる。

この段階に入ってから、 さっそく弦を放したい衝動に駆られていると……。


「よし、そのままアイスクリームって十回言ってみろ」

「ごめんなさい。私の耳がおかしくなったんだと思うんですけど、今アイスクリームって言いました?」

「ああ、言った。ほら、やってみろ」


やってみろ、と言われましても……。

すでにもう放したくて、弦を引く腕がぷるぷると震えている。

それでも葉山先輩の 目が本気だったので、私はやけくそでアイスクリームを連呼することにした。


「アイスクリーム、アイスクリーム……」


それを十回言ったあとで、私は弦を離す。

すると、パンッと矢が的の中央を射貫いた。

それを呆然と凝視したあと、私は葉山先輩に視線を移す。