紅葉色の恋に射抜かれて

「練習するぞ、時間は有限だからな」

「は、はい……」


すたすたと弓を取りに行く葉山先輩に首を傾げつつも、私はいつもより気持ちが軽くなるのを感じながら、弓を引いた。

それから、部活が休みの日に葉山先輩とふたりきりで練習することが増えた。

今日も雨が降る中、私は弓を引き絞りながら、自分の射形を葉山先輩に確認してもらっているのだけれど……。


「ダメだ……。前よりはあたるようになってきたけど、日によって的中率が大きく変わっちゃう」


外れた矢を諦め悪く見つめながらがっくりと肩を落としていると、目の前に立っている葉山先輩が私の肩に手を置く。


「弦を離すまで、じゅうぶんに弦を引ききれてないのと、離れに迷いがあるな。だから矢は通常より早く落下するし、左右にぶれて安土に刺さるんだ」

「つまり、『早気』ってことですよね」


早気は弓道では致命的な心の病気みたいなものだ。

気持ちばかりが焦って、早く弦を放したくなってしまうから、早気。

筋トレは毎日十分しているから、理由は筋力ではなく、絶対といっていいほど心の問題だった。

大会前に最悪だ、と落ち込んでいると、葉山先輩は考えるように顎をさすり、それから少しして、私を真剣な目でまっすぐ射貫いてきた。


な、なに?


あまりの剣幕にゴクリと唾を呑むと、葉山先輩が一歩、また一歩と距離を縮めてきた。

私は矢をつがえていたのでそこから動くこともできず、近づいてきた葉山先輩に ぎょっとしつつも、その瞳を見つめ返す。