紅葉色の恋に射抜かれて

「でも、俺は劣等生だってバカにされても、ただ弓道が好きだったから、やめるって選択肢はなかったんだよな。だから、俺は俺なりに弓道に向き合うって決めたんだ」


そうやって努力してきた時間が、今の葉山先輩を象ってる。葉山先輩の助言が心にまっすぐに届くのも、みんなが葉山先輩を慕うのも、ぜんぶ葉山先輩が弱い人の気持ちを知っていてくれてるからなんだ。


「努力してれば、いつか弓道は応えてくれる。弓を引いた数、自分と戦った時間が今の俺の自信に繋がってるからな。だから六実も、今は苦しいだろうが、負けるな」


目を細めて、その眼差しを和らげた葉山先輩に、私はうっかり泣きそうになる。

ずっと暗闇の中を彷徨っている気分だった。

そんな私に決して甘やかすような言葉や逃げ道は与えず、あえて地図と手持ちの小さな灯りだけを渡して進めと言う葉山先輩。

私は耳触りのいい慰めの言葉より、そんな葉山先輩の背中を押してくれるような厳しいエールのほうがうれしい。

そうやって、私を成長させてくれる先輩のことが……。

そこまで考えて、我に返る。

私は今、なにを考えてたんだろう。

形になろうとしたひとつの想いに、私は大きくかぶりを振る。

それを見ていた葉山先輩が訝しげに片眉を持ち上げた。


「どうかしたのか」


……挙動不審だよね、私。

大きく脈打つ心臓を深呼吸で静めながら、私は平静を装いつつ話題を変える。