紅葉色の恋に射抜かれて

「六実、弓道において〝勝つ〞とは、どういうことだと思う?」

「それは……相手チームよりも多く的に矢をあてること?」

「やはりな、六実は勘違いしている。いつもの練習であろうと、大会であろうと、六実が戦う相手は人じゃないぞ」

「えっと……」


どういう意味だろう?

私はその言葉の意図がわからずに、ぽかんとしてしまう。

そんな私に気づいてか、 葉山先輩はすっと手を伸ばしてきて、私の胸のあたりを指差した。


「六実は先輩に迷惑をかけられないから矢をあてたいというが、本当にそうなのか? 俺には、あてられないことで仲間からどう見られるのかを怖がっているように見える」

「そんなの当然です。私が大会に出ることに異論がある人たちはたくさんいるでしょうし、なにより自信がないんです。プレッシャーもすごいですし、ちゃんとあてられ るのかなって……」

「そう、六実に足りないのはその自信だ。弓を引くたびに俺たちが戦い、勝たなければならないのは揺らいでしまいそうになる心。自分自身こそが敵なんだよ」


自分自身が敵……確かにそうかも。

そして、その心こそが的そのもので、私はずっと自分の弱さに向き合えていなかったから、きっと矢は外れてしまうんだ。