紅葉色の恋に射抜かれて

「好きなものを好きでい続けるのは難しいのに……葉山先輩はすごいです。うまくいかないことがあると、私はときどき弓道が嫌いになるから」


弦を張った弓をぎゅっと両手で握りしめて、私はうつむく。

すると、葉山先輩は袴を手に衝立のほうへ向かいながら答えた。


「それでもやめられないから、六実は通常の練習が終わったあとも、部活が休みの日も、こうしてひとりで弓道場に弓を引きに来てるんじゃないのか?」

「それは……大会で、先輩たちに迷惑はかけられませんから」

「そうか」


短く返事をした葉山先輩は、衝立の向こうで着替え始める。

特に部室があるわけで はないので、着替え場所も分かれていない。

そのため、譲り合いで衝立を使って、みんな袴やジャージに着替えていた。


「俺は……六実が義務や責任感だけで弓道を続けているようには思えない」


衝立越しに、葉山先輩が話しかけてくる。

どうしてそう思うんだろうと首を傾げていると、そんな私の疑問を見透かしたように葉山先輩は言葉を続けた。