「高木君、離して。ひとりで歩けるから」
「嫌です。それに、直帰することになった今は、勤務外だ。先輩でも後輩でもない」
何を都合の良いことを言っているのだ。
勤務中でなくても、立場は変わらないのに。
距離が突然縮んだみたいに、高木君との年齢差も縮まればいいのに。そう思っても、現実的に無理な話でしょ?
高木君に連れられ飛び込んだのは、一軒の喫茶店だった。
直帰するはずが、喫茶店に入るって。高木君が何を考えているのか分からない。
店内に入ると、可愛い女の子から「いらっしゃいませ」と声をかけられた。
喫茶店『こもれび』、店内の空気が穏やかで。ここだけ時間の流れがゆっくり進んでいるような雰囲気の店だ。
カウンター内に立っている男性が店主だろうか。まだ若そうな見た目からして、お洒落なカフェ辺りを経営していそうな雰囲気なのに。などと考えている私の手を引き、高木君は空いている窓際の席に座った。
入店時に私達を迎えてくれたスタッフの女の子から「ご注文は?」と聞かれ。高木君は迷わずアイスコーヒーを頼み、二人の視線はメニュー表を眺めている私に注がれた。
「えっと、私はアイスミントティーを」



