ふと左肩に視線を向ける。じっくりと眺めたことなど無かったけれど、高木君って睫毛が長いんだな。とか、見た目よりもずっと柔らかそうな髪だなぁ。などと観察してしまった。


 触れてみたい。


 眠る高木君に手を伸ばし、そっと髪に触れてみる。さっき高木君が私にしてくれたように、髪を撫でると。異変に気付いたのか、突然高木君が目を覚まし顔を上げて起き上がった。
 慌てて、パッと手を離し。高木君に触れていた手を引っ込め、後ろに隠す。


「すいません、寝ちゃってましたよね? 岩永さん、停車ボタン押さなかったんですか? 停留所とっくに過ぎてますよ」

「え? あぁ! ホントだ」


 うっかりしていた。バスの窓から見えている景色は、降りるはずの停留所を通過し、かなり離れてしまっている。普段は見ない景色が広がっていた。