数分して、ご飯の乗ったお盆を持って碧琉先生が戻ってきた。
「おまたせ、昨日ほぼ食べれてないから今日はお腹を刺激させない為にお粥だよ。少し物足りないかもしれないけど、食べすぎるとお腹痛くなっちゃうから我慢してね。」
そう言いながら、机の上にお盆が置かれる。
最近は、毎日ご飯が食べられることが当たり前になっていたけど、こうやって夢を見るとご飯を食べられるありがたさが身に染みる。
朝、昼、夜、誰にも邪魔されないで、怒られないでご飯が食べられることが幸せで…
つい、涙が出そうになる。
「…いただきます」
スプーンを手に取ってお粥?という水っぽいご飯をすくう。
ここに来てから初めて食べたものだけど、ほんのり温かくてするする食べやすいこれが私はかなり好きだった。
口に含むと、ほのかな温かさと優しい甘みが心を安心させる。
思ってみれば、こうやって普通にご飯を食べられる毎日なんて施設以来だ。
いや、お昼を含めたら初めてなのかもしれない。
学校や施設では、私の食べ方が悪いのか、周りの子には笑われたし、先生には叱られた。
教えてもらったことがなかったから、箸もスプーンも皆のように上手く持つことが出来なかった。
でも、ここに来てからはそういうこともなかったから、心から安心してご飯を食べられるのはここが初めてなのかもしれない。
先生は、持ち方を優しく教えてくれるし、上手く出来なくても怒られないから食事の時間が怖くない。
いつも、ニコニコ見守ってくれてて安心する。
そんなことを考えながら、6割程度お粥を食べた所で、手が止まる。
お腹いっぱいになっちゃった…
でも、残すと怒られるから食べなきゃ……そう思うけど手が進まない。
いつもそうだった。
怒られるのはわかってるけど、お腹いっぱいな時はそれ以上食べようにも食べれない。
普段あまり食べないから、給食も少しの量で満足しちゃうのに、先生は残すことを許してくれなかった。
食べ終わるまでお昼休みは無くて、みんなが遊んでいる声を聞きながら1人一向に減る様子の無い給食をずっと眺めていた。
「もう、お腹いっぱい?」
「…!!ごめんなさい!!ちゃ、ちゃんと食べますっ、食べれますっ」
思わず、大きな声を出してしまった。
「…………」
先生の手が上がる
叩かれる…
そう思った手は、予想に反し、優しく私の頭を撫でた。
「無理して食べなくて大丈夫だよ。無理して食べて、具合が悪くなっちゃったら本末転倒だからね。ご飯は、元気をつけるためのものでしょ?」
わけがわからなかった。
当然怒られると思ったのに、怒られないどころか頭を撫でられた。
「そんな顔しないで、誰も怒ってないから。大丈夫だよ。」
「………なんで?…なんで、怒らないの?ご飯、残しちゃった……のに、悪いことしたのに、なんで?」
そう言うと、碧琉先生は一瞬悲しそうな顔をする。
でも、すぐに優しい顔に戻って、私の手を握って言い聞かせるように言った。
「ご飯を残しちゃうのは、悪いことなんかじゃないよ。お腹いっぱいな時、それ以上食べられないのは当たり前だし、無理に食べたら吐いちゃうでしょ?…それがもし、お菓子の食べ過ぎだったりしたら、それは良くないかもしれない。……でもね、起きたばっかりで、昨日もほぼ何も食べてないんだから、食べられないは当然だよ。だから、穂海ちゃんは悪くない。悪いことをしてないのに、怒ることはないでしょ?」
「…でも、学校の先生も施設の先生もみんな、ご飯を残したら怒った。学校の先生は、吐いてもいいから食べろって」
「……確かに、この世の中には満足にご飯を食べられない人たちがいるから、本来ご飯を残すのは良くないのかもしれない。でもね、自分の具合が悪くなってまで無理やり食べることは正しいのかな?全部食べきったとしても、その後自分が苦しくなるのは辛くない?学校とかだと、残すのを許しちゃうと、みんな残し始めるから怒ったのかもしれない。でも、少なくともここは病院だから。患者さんの辛さを少しでも無くしてあげるはずの場所で、わざわざ苦しい思いをさせるのはおかしいでしょ?俺たちは、患者さんたちに苦しい思いをさせたくないの。少しでも、辛いことから逃がしてあげたいの。だから、ここでは誰も残しても怒らないから、無理しなくていいんだよ。」
「おまたせ、昨日ほぼ食べれてないから今日はお腹を刺激させない為にお粥だよ。少し物足りないかもしれないけど、食べすぎるとお腹痛くなっちゃうから我慢してね。」
そう言いながら、机の上にお盆が置かれる。
最近は、毎日ご飯が食べられることが当たり前になっていたけど、こうやって夢を見るとご飯を食べられるありがたさが身に染みる。
朝、昼、夜、誰にも邪魔されないで、怒られないでご飯が食べられることが幸せで…
つい、涙が出そうになる。
「…いただきます」
スプーンを手に取ってお粥?という水っぽいご飯をすくう。
ここに来てから初めて食べたものだけど、ほんのり温かくてするする食べやすいこれが私はかなり好きだった。
口に含むと、ほのかな温かさと優しい甘みが心を安心させる。
思ってみれば、こうやって普通にご飯を食べられる毎日なんて施設以来だ。
いや、お昼を含めたら初めてなのかもしれない。
学校や施設では、私の食べ方が悪いのか、周りの子には笑われたし、先生には叱られた。
教えてもらったことがなかったから、箸もスプーンも皆のように上手く持つことが出来なかった。
でも、ここに来てからはそういうこともなかったから、心から安心してご飯を食べられるのはここが初めてなのかもしれない。
先生は、持ち方を優しく教えてくれるし、上手く出来なくても怒られないから食事の時間が怖くない。
いつも、ニコニコ見守ってくれてて安心する。
そんなことを考えながら、6割程度お粥を食べた所で、手が止まる。
お腹いっぱいになっちゃった…
でも、残すと怒られるから食べなきゃ……そう思うけど手が進まない。
いつもそうだった。
怒られるのはわかってるけど、お腹いっぱいな時はそれ以上食べようにも食べれない。
普段あまり食べないから、給食も少しの量で満足しちゃうのに、先生は残すことを許してくれなかった。
食べ終わるまでお昼休みは無くて、みんなが遊んでいる声を聞きながら1人一向に減る様子の無い給食をずっと眺めていた。
「もう、お腹いっぱい?」
「…!!ごめんなさい!!ちゃ、ちゃんと食べますっ、食べれますっ」
思わず、大きな声を出してしまった。
「…………」
先生の手が上がる
叩かれる…
そう思った手は、予想に反し、優しく私の頭を撫でた。
「無理して食べなくて大丈夫だよ。無理して食べて、具合が悪くなっちゃったら本末転倒だからね。ご飯は、元気をつけるためのものでしょ?」
わけがわからなかった。
当然怒られると思ったのに、怒られないどころか頭を撫でられた。
「そんな顔しないで、誰も怒ってないから。大丈夫だよ。」
「………なんで?…なんで、怒らないの?ご飯、残しちゃった……のに、悪いことしたのに、なんで?」
そう言うと、碧琉先生は一瞬悲しそうな顔をする。
でも、すぐに優しい顔に戻って、私の手を握って言い聞かせるように言った。
「ご飯を残しちゃうのは、悪いことなんかじゃないよ。お腹いっぱいな時、それ以上食べられないのは当たり前だし、無理に食べたら吐いちゃうでしょ?…それがもし、お菓子の食べ過ぎだったりしたら、それは良くないかもしれない。……でもね、起きたばっかりで、昨日もほぼ何も食べてないんだから、食べられないは当然だよ。だから、穂海ちゃんは悪くない。悪いことをしてないのに、怒ることはないでしょ?」
「…でも、学校の先生も施設の先生もみんな、ご飯を残したら怒った。学校の先生は、吐いてもいいから食べろって」
「……確かに、この世の中には満足にご飯を食べられない人たちがいるから、本来ご飯を残すのは良くないのかもしれない。でもね、自分の具合が悪くなってまで無理やり食べることは正しいのかな?全部食べきったとしても、その後自分が苦しくなるのは辛くない?学校とかだと、残すのを許しちゃうと、みんな残し始めるから怒ったのかもしれない。でも、少なくともここは病院だから。患者さんの辛さを少しでも無くしてあげるはずの場所で、わざわざ苦しい思いをさせるのはおかしいでしょ?俺たちは、患者さんたちに苦しい思いをさせたくないの。少しでも、辛いことから逃がしてあげたいの。だから、ここでは誰も残しても怒らないから、無理しなくていいんだよ。」



