数分して、やっと女の子の体温は35.5まで回復した。

ひとまず安心…という所かな。

でも、気になる点はまだまだある。
1つ目は、運ばれてきた時に体中がびしょ濡れであったこと。
2つ目は、栄養失調があまりにも酷く、ほぼ飢餓状態であったこと。
3つ目は、この女の子の身元が一切わからず、救急隊が着いた時にはこの女の子がひとりでアパートの一室に倒れていたことだ。

まあ、ここから予測されるのは、親からのネグレクトと虐待。
それで、この子が死ぬのを恐れて通報だけして逃げた…って感じかな。

もし、俺の予想が当たっていた場合、この後この子をICUに入れるとなると、目を覚ました時にパニックになりかねない。
そう判断して、この子はとりあえずナースステーションに一番近い個室に入れることにした。

みんなが寝静まった静かな病棟にストレッチャーの音が響く。
病室のベッドに女の子を寝かせると、心拍数モニターと酸素マスク、そして簡易的に栄養を補給するための点滴を繋いで、電気毛布をかけた。

さっき、この子を抱き上げた時、その軽さに驚いた。
うちの朱鳥も、体重は軽い方だが、同じくらいの身長なのにそれよりもだいぶ軽い。

とりあえずは、意識を取り戻してくれるのが一番、でもそのあとはきっと……長くなるな。