穂海を病室に送ってから医局に戻ると、ふと佐伯先生に声をかけられた。

「お疲れ様ー、聞いたよ院内学級行ってきたんだって?」

「お疲れ様です。そうなんです、今穂海を病室に送ってきた所で。」

立ち話をすると邪魔になるからか、佐伯先生に手招かれるまま医局内の休憩スペースに入る。

先生はコーヒーを俺の分まで入れてくださると、それを向かいあわせのソファの間のテーブルに置いた。

「ありがとうございます。」

お礼をいながら、俺もソファに腰掛ける。

「そっかあ。院内学級どうだった?」

「少しトラブルもあったんですけど、穂海は楽しんでくれたみたいです。」

そう答えながら、少し疑問を抱く。

そういえば俺、佐伯先生に院内学級に行くって話したっけ?

もしかすると、清水先生とか園田先生から聞いたって言う説も否めないが……

「楽しんでくれたならよかった。それ聞いたら、きっと愛依も喜ぶよ。」

愛依……?

聞き覚えのある名前

割りと最近、いやついさっき聞いたような……

”私は、楸 愛依って言います。今日はよろしくね!”

「……えっ!!」

なんで先生が呼び捨てなんだ?

もしかして、元からの知り合いとか……

「あ、気付いた?」

そうにやりと笑う佐伯先生。

「…その、先生と楸先生は……どのようなご関係で……」

変に堅苦しい言い回しになってしまう。

でも、そう聞くと佐伯先生はよくぞ聞いてくれました!と言わんばかりに得意げな笑みを浮かべる。

「愛依は俺の元患者なの。そんでもって、今も仲良くやらせてもらってますって感じ?」

”元患者”、”仲良く”

えーっと、つまり……

「お付き合いされてる?」

「ご名答」

清々しい程の即答だった。