コンコンッ

ドアをノックするも返事はない。

寝ているのかな…と思いながらそっとドアを開ける。


飛び込んできた光景に、俺は思わず目を見張った。




飛び散ったガラス片とそこに蹲るように倒れているのは血に塗れた穂海の姿。

「ほの、み……?」

頭の中が真っ白になる。

状況の理解が出来なかった。

なんで?なんで??

違う、今はそうじゃない、バイタルを確認しなくちゃ……

穂海に駆け寄り、血まみれの手をそっと取る。

「っ……」

生暖かいぬるりとした感触に、思わず悲鳴をあげそうになる

手の震えが止まらない。

は、はやくバイタルを確認して、ナースコール

幸い脈はある

でも、弱くて、呼吸も弱い、

荒くなる息を、必死で抑えながらナースコールを押した。

「はい、どうされましたか」

「っ……、しょ、小児科瀬川、あ、あの………」

「はい?」

落ち着いて、状況を説明して応援を呼ばなくちゃ

「ス、スタットコールお願いします。…っ、悠木さんが、手を切って倒れててっ」

今の状況を言葉にしたおかげで、少しだけ冷静になる。

一刻を争う危ない状態。

今救命措置を行えば助かる可能性も十分にある。

「っ、わかりました。スタットコール、かけます。」

そう、看護師さんが言うと直後に館内放送が流れる。

"スタットコール スタットコール 医療スタッフは506号室まで集まってください"

一気に緊張感が高まる。

ゴクリと唾を飲んで、再び穂海の傍へ駆け寄った。