そう言うと、瀬川くんが露骨に嫌な顔をする。

「とりあえず、レントゲンとエコー撮ってみよう。それで確定させて、状況みて治療考えるから。」

処置室内に元から置いてあるエコーをベッド横まで運び準備をする。

瀬川くんにも、下の服を少し下げてもらう。

「ごめん、ちょっとヌルッとするよ」

専用のジェルを塗り、準備を進めていると、陽向が戻ってきた。

「とってきたよ。」

「ありがとう。陽向、これ多分…」

「虫垂炎か?」

話が早くて助かる。

虫垂炎、世間一般で言うところの盲腸だ。

腸のもう使われていない部分である虫垂が炎症を起こして腫れ上がるのに伴って強い腹痛と微熱を引き起こす。

エコーでみても、虫垂がかなり腫れている。

虫垂炎は、薬で治す方法と手術をする方法があるんだけど…

「これ、切っちゃった方が早いな。外科と麻酔に連絡するか?」

"切る"という言葉を聞いた途端、瀬川くんの表情が変わった。

「…もしかして、瀬川くんそういうの苦手な感じ?」

そう聞くと、瀬川くんはすごい速さで頷く。

「ありゃりゃ、そりゃ災難だったね~。でも、これは薬じゃ難しいっしょ。ドンマイ!」

ほぼ手術を行うことが確定しつつある現状に瀬川くんの顔が絶望に染まっていく。

「大丈夫、大丈夫。麻酔するから痛くないって瀬川くんも知ってるしょ?」

「それでも…」

普段のクールな表情とはうって変わり、子どものような半泣きの顔が可哀想だけど、面白くて笑ってしまう。

「大丈夫、大丈夫。さ、検査室も暇じゃないんだからさっさと行くよ~」