でもこうなった時の君は、正直ちょっと面倒だ。
なぜなら、
「ねえ、どう思う?」
こうして他人と議論しようとするからだ。
七夕の伝説なんてどうせフィクションなんだから、そんなこと考えても仕方がないだろ
そんなことを言ってしまえば、一瞬にして君が不機嫌になってしまうことは目に見えている。
だから僕はいつも本心をぐっと押し殺して、君の妄想に付き合うようにしているのだ。
「でも星の一生は俺らに比べて随分長いぞ。
質量によって寿命は異なるけど、太陽は約100億年らしい。
ベガとアルタイルの寿命は知らないけど、太陽と同じくらいだとしたら1000年なんて一生のうちの1000万分の1だ」
ベガとアルタイルというのは、星座上で織姫と彦星だとされている星の名前だ。
「俺らの寿命が100年だとしたら、10万分の1年に1回会えるのと同等ってことだ。
つまり……5分に1回会えるのと同じ。
俺らの一生に対して1000年が長すぎるから、もう充分に反省したと感じるだけじゃないか?
奴らからしてみれば1000年なんて……ほんの3日半反省しただけかもしれないな」
俺は生まれつきめっきり理系で、物事をすぐ数値的に分析してしまう。
有益で面白い情報だろうと思って話すのに、話し相手から引かれることがままある。
主に女性。
何度合コンでやらかして、後で男性陣に注意されたことか。
でも彼女は、彼女だけは、僕の分析に付いてきてくれるし興味深く聞いてくれる。

