「・・・ーお姫様は綺麗なドレスに身を包み
なに不自由なく育ってきた‥


けれど彼女の心は満たされない


お城から見える街へ強い憧れを持っていたのだ‥‥」



横から聴こえる静かな寝息を確認する


「‥‥アイリス?」


小さな声で名前を呼んでも
もう反応はない
風邪をひかないように肩までしっかりと毛布を被せ静かに部屋を後にする



「叔父様、叔母様、
やっとアイリスが眠りました」


「リアーナいつもありがとう」


小さく首を横に振り食卓に腰掛け
叔母様の入れてくれた温かいミルクを飲む


「リアーナ‥ごめんなさいね
16にもなろうとする歳なのに
こんな思いをさせて‥‥」


叔母様の目線は
お世辞でも綺麗とは言えない
私が着ている洋服に向けられている


私は咄嗟に袖から出た細い腕を隠した


「いいえ、叔父様と叔母様には感謝しています!
両親を亡くした私を叔父様と叔母様が助けてくださいました!
それに妹の様な可愛いアイリスもいる‥‥
今私はとても幸せです」


「本当にこの子は‥‥」


涙ぐむ叔母様の肩を抱き叔父様はポツリと話し出す


「リアーナ‥お前はもう16になる
この国では16ほどの歳になると大抵の女性は嫁ぐものだ
お前にはその様な者は居ないのか?」


「‥はい、今のところは‥‥」


ひとつため息をついたあと
叔父様が話し出した


「私たちに縛られなくていいんだぞ?
リアーナ、お前はお前が思う通りに生きなさい」



「‥ありがとう、叔父様」



私は10歳の頃
父と母を亡くした私は
母の弟である叔父様の家に迎え入れてもらった


この家は貧しいながらも
笑いが絶えない素敵な家庭
生まれたばかりのアイリスが居るにも関わらず
私を引き取ってくれたのだ



毎日畑を耕して毎日水を汲んで
育てた野菜で楽しく叔母様と料理をする
これ程までに幸せな事があるのだろうか


私には1ミリの不満もない



(これ以上の幸せなんてないわ・・・)



叔父様と叔母様に挨拶をし
アイリスが眠るベットへと入った



『お父様‥お母様‥
明日もまた皆んなが幸せで暮らせますよう
見守ってくださいね』



そう祈り今日という1日が幸せであった事を感謝して眠るのだった