もうすぐで退院できる日。

 母親が昔のアルバムを持ってきてくれた。

 幼少期、今とは違う場所で暮らしていた。

 そこには幼馴染も当時の友人達もいる。

 「懐かしい…」

 泥だらけになりながら遊んだり、夏には花火、冬には雪合戦した時の写真や作った雪だるまの写真もあった。

 楽しかった記憶と寂しい記憶。

 僕は途中で今住んでいるところに引っ越してしまったから。

 手紙も来ていたけれど、いつの間にか送ることも送られてくることも無くなった。

 「ねえ、お母さん」

 「何、楓奏」

 「まだ、皆ここにいるかな」

 皆と遊んだ公園の写真。

 その後ろに写っているマンションが昔住んでいた家。

 「行きたいの?」

 僕は頷く。

 「会いたいんだ、何となく。向こうは忘れてるかもしれないけれど」

 幼馴染で親友でもあった鹿野陽多。

 彼とは約束もしたから。