どうしたら良いのかと悩んでいると、部屋にお姉さんである希美子さんが訪ねて来た。
「少しお邪魔して良いかしら?」
「あ、はい。どうぞ?」
何の用かと思ったら、私へ薄い色のスーツを持って来てくれた。
「私の物で悪いけど、着物より楽でしょ?」
「え?でも…」
「恋人の母親が旅館の女将だからって、着慣れない着物なんて着なくて良いのよ!
あなたはあなたのままで良いんじゃない?
稀一郎が好きになった、あなた自身を母は見たいんだと思うわよ?
素のままで、あなたは十分素敵な女性だと思うわよ?」
「素のままで…ですか…」
「稀一郎から、律子の事聞いたわ?
あなたに酷いことした事も全て、ごめんなさいね?昔はそんな女(こ)じゃ無かったんだけど…
お金が絡むと、人って変わるものね…?」と、寂しそうに話す希美子さんが、少し気の毒に思えた。
「律子さんから、学生時代はお姉さんに良く可愛がってもらってたと聞きました。
私が初めて律子さんに会った時の印象は、とても明るくて優しいイメージだったんです。
だから、真の部分は、お姉さんの知ってる律子さんと、きっと変わってないと思います。
私なんかの洞察力なんて、たかがしれてますけど?」
「有り難う!
やっぱり、稀一郎が選んだだけあるわね?」
え?
「さぁ、早く着替えて?
母屋に乗り込むわよ!」
「えっ!」
「稀一郎を奪い返しにいくのよ!
グズグズしてると、鬼ババに喰われちゃうわよ?」
お姉さんまで、鬼ババって…

