薬を飲んで寝たせいか、目が覚めた時には、もう夕方になっていて、下に下りると生田さんは誰かと電話で話していた様で、私に気づくと微笑み、電話の相手に「世話になったな?」と言って電話を切った。

「もしかして、ゼネラルマネージャー?」

「うん、そう。具合どう?」

「ん? うん。随分良くなった…
それより、昨夜は凄く迷惑かけて…ホントごめんなさい…」

二人で食事を済ませた後、昨夜の私の醜態ぶりを生田さんから聞かされて、余りの酷さに恥ずかしくて、生田さんに何も言えず、謝る事さえ出来ずに、そのまま二階へと上がったのだ。

「今回は許す!
元はと言えば、俺が原因だしな?」
と言って、生田さんはコーヒーを淹れてくれた。
そして、律子さんと婚約に至った話を詳しく話してくれた。

「彼女と見合いをしたのは事実だが、でも、俺は見合いだなんて知らなかったんだ。
“ 親父の様子がおかしいから直ぐ帰って来てこい ” って姉貴から連絡を受けて、休暇を貰い慌てて帰ったら、親父はピンピンしてた。
その時、姉貴に騙されたって気が付いた。
見合いなんてするつもりも無かったが、旅館組合の会長に仲立人までお願いしていたから、逃げるに逃げれなくて…
マジどうなるか焦ったよ…俺はずっと真美が好きだったからな?」

生田さんのご両親は、今でも彼に旅館を継いで欲しいと願ってるらしく、彼に結婚して貰って、若女将をと思っているらしい。
だが、生田さんはSAKURAホテルに就職した時から、旅館は継がないと言い続けており、お姉さんの希美子さんも継ぎ気は無いらしく、姉弟の間で押し付けあっていたらしい。
そんな時、希美子さんは偶然再会した後輩の律子さんが、旅館に興味を示した事を良い事に、生田さんとのお見合いをセッティングしたと言う。

「お姉さん凄い人ですね?」

本当は、怖い人って言いたかったけど、一応私なりに言葉を選んだつもりだ。