電車の中では、今迄知る事のなかった生田さんの学生時代の事や、ゼネラルマネージャーとの出会い、そして、今は居ない深田恭子さんという人の事を聞かせられた。
なぜ、私にそこまでとは思ったが、心配して送ってくれる生田さんの話しを聞かない訳にもいかず、初めは適当に相槌を打っていた。
でも、深田恭子さんと言う人の話だけは、なぜかとても興味が湧いた。
「深田恭子さんって、素敵な人なんですね?」
「あゝ、彼女は仕事は出来るし、何よりお客様の事を誰よりも大切に思ってる。
後輩だけど、尊敬出来る女性だよ?」
「好きなんですね?」
「あゝ好きだよ、今も変わらず…」
なんだ…やっぱり、好きな人いたんだ?
それが分かって、少し残念な私がいる。
でも…生田さんにそこまで言わせる女性(ひと)ってどんな人だろう…
「でも、彼女以上に君が好きだ」
「!?」
突然の生田さんの告白に、驚き言葉を失っていた。
「あー時間切れだね?」
生田さんの言葉は、私の家に着いた事を表していたらしく、いつの間にか家の前まで帰って来ていたのだ。
「今夜は、俺の事考えて寝れないかもな?」
俺?
どんな時でも、自分を崩さず私と言ってたのに?
「な、何言ってるんですか?
馬鹿なこと言ってないで、早く仕事に戻って下さい!」
生田さんはニッコリ笑って、“ おやすみ ” と言って背中を向けた。
「寄り道したらダメですからね?」
彼は私の言葉に、後ろ手を挙げてホテルへと戻って行った。
な、なにが俺の事考えてだ!
いい歳して馬鹿じゃないの!
あんたの事なんか考えるかっ⁉︎

