あの日以来、生田さんに鍵を開けてもらって10分だけ、星を見させて貰ってる。

「そろそろ時間ですね?
有難うございました」

「じゃ、また明日。お疲れ様」

「お先に失礼します!」

着替えを済ませ、駅へと向かってると、後ろからクラクションが鳴った。
振り返って見ると、見覚えの無い車がゆっくり近づいて来る。
嫌な予感がして、鞄から携帯を出し、私は足取りを速めた。
するとその車も、私の足取りに合わせ速度を上げて来たのだ。

どうしよう…
怖い。

助けを求めてホテルへ電話すると、生田さんが出てくれた。

『すぐ行く!』

電話を切ると直ぐに、駆けつけてくれた生田さんは息を切らし、額には汗が滲んでいた。

「大…大丈夫か?」

「すいません…有難うございます」

車は生田さんを見るなり、猛スピードで去っていった。

何だったんだろう…
不審車が出てるなんて噂聞いてないし…

「家まで送ってく!」

「いえ、もう大丈夫です」

「さっきの車、どっかで待ってるかもしれないだろ?」

そう言われると…
その可能性も無いと言えないし、怖い。

「でも、生田さんまだ仕事が…」

「たまには、素直に甘えたらどう?」

たまには…って…?
私達はそんな関係じゃないのに…

「僕は、君に何かあってから、後悔したくない。会社の先輩としてもね?」

そこまで言われて断る訳にもいかず、家まで送ってもらう事にした。

「じゃ、すいません…
お願いします」