拾ったワンコが王子を連れて来た


なにもしてなくて怒られるの?
それ、おかしくない?

さっちゃんの言ってる事が分かんない。
私…頭おかしくなったのかな…?
生田さんの事と言い、さっちゃんの事と言い、二人が言おうとしてる事が全く分かんない。
こんなんじゃ、お客様が何を求めてるかなんて、わかんない。

私の想い描くホテルマンは、お客様が求めてるおもてなしを、どれだけお応え出来るかだと思ってる。
なのに、近くにいる二人が何を言おうとしてるかわからない様では、お客様がなにを求めてるかなんて、到底わかりっこない。
悔しいけど…これではホテルマン失格だわ…

「わたし…ホテルマン…仕事辞めた方が良いのかな?」

「何でそうなるの?
ホテルマンはあんたの夢だったんでしょ?
セクハラ男に負けないで、折角再就職出来たのに、絶対辞めるなんて言っちゃダメだからね!」

「でも…何をしたら良いのか、何をしなかったから生田さんを怒らせたのか、全然分かんないんだもん…」

あー家に帰るのが怖い。

「きっと…
生田さん…もう出て行ったよね?」

「かもね?」

「どうしよう…」

落ち込む私に、「現実を受け止めるのが怖い?」とさっちゃんは聞く。

私はさっちゃんの言葉に、小さく頷いた。

怖い…
何故こんなに不安なのか…
今までこんな気持ちになった事ない。
両親の心が離れて行くのを見ていた時も、離婚をすると聞いた時も、全く不安なんて感じなかったのに…