翌朝、目覚ましが鳴る前に、彼(犬)によって起こされてしまった。
「わかった、わかった!
そんなに舐めないでよ?」
彼に顔中を舐められ、私の顔は酷い状態になってる。
「顔洗ったら、散歩連れて行ってあげるね?」
部屋を出ると、下から物音がする。
誰かいるの…?
ゆっくり、足音を立てない様に階段を降りて行く。
どうやら音がするのはキッチンからの様だ。
階段下にあるモップを持って、勢い良くキッチンへ続くドアを開ける。
「誰だ!?」
え…? なんで…
私の声に驚き振り返る男(ひと)は、生田さんだ。
物音の正体は、生田さんが朝食を作ってる音だった。
「ここで何してるんですか?」
「朝食作ってる?」
なぜそこで疑問符がつくのよ!
「そうじゃなくて! なんでいるのか聞いてるんです!」
「僕はここに住んでるから?」
確かに昨日までは住んでた。
でも、私は出て行って欲しいとお願いした。
だから…てっきり夜勤明けでも、帰って来ないと思ってた。
「昨夜、出て行ってとお願いしましたよね?」
「そうだっけ?」
何がそうだっけだ!?
しらばくれて…
「じゃ、もう一度はっきり言います!
出て行って下さい!」
「なぜ?」
なぜって…
「君は、俺といるのが怖いから出て行けって言ってるんだろ?」
怖い…? 私が?
「君は、両親の憎しみ合った姿を見て、恋愛する事が怖くなった?
でも、俺に好意を持ち始めていて、この先自分がどうなるのか怖くて、俺から逃げたいと思ってる。違うか?」
違う!
「違う、違う!
私は誰も好きにならない!
だから、何も怖く無い!」
「だったら、俺がここに居ても良いよな?」
「………」
「さぁ、出来たぞ! 一緒に食べよう?」
彼が作ってくれたのは、イングリッシュマフィンの上にハムとポーチドエッグを乗せた、エッグズベネディクトだった。
彼に言われるまま、席に着いた私は、フォークとナイフを持ち、タマゴにナイフを入れる。
パンはカリッとトーストされ、半熟のタマゴはとろ〜り黄身が流れる。
ポーチドエッグもさることながら、エッグズベネディクトは、全てにおいてタイミングがモノを言う朝食料理だと思う。
でも、ホントにバツグンの仕上がりになってる。
まるで、私が起きてくるタイミングを見計らって作った様だった。
卵黄とレモンで作ってあるホランデーズソースもとても美味しい。

