拾ったワンコが王子を連れて来た


なんで?
なんで総帥の息子が深田さんを指名するの?

「それ、いくらなんでも、可笑しいでしょ?
普通、バトラーなりたてを指名したりする?
ホテル側だって、相手が相手だけに、ベテランを担当にするでしょ?」

「でも、それは本当らしいよ?
その時、擦った揉んだあったらしくて、うちのホテルの人間なら皆んな知ってるらしいもん!」とさっちゃんは話した。

擦った揉んだ?
え? 何が合ったの…?

そして、その総帥の息子である、桜花崎穰様が、深田さんに好意を持ち、婚約話まで進んだらしいと、さっちゃんは話した。
だが、その婚約話も土壇場になって、なぜか深田さんの方から婚約破棄を申し出て、スイスに行ってしまったと話した。

玉の輿を捨ててスイスねぇ…
えっ!?
まさか…

「スイスに行ったって、まさかそれって、インターンシップってヤツ?」

「らしいよ?」

やだ、マジ凄い人じゃん!!
インターンシップなんて、まずお上(上層部)から許可下りないと言われてる。
それも、総帥の息子との婚約を破棄にした人に、許可したの!?
マジで何が合ったの?
って言うか、どれだけ凄い人なのよ!?
そりゃー、そんな凄い女(ひと)なら、生田さんも惚れるわ!

「凄いよね?
お上が言いなりになる程、凄い人なんて?」とさっちゃんも驚いている。

「うん…」
凄すぎて言葉が出ない。

「あっ、そのインターンシップの推薦者は、うちの小野キャプテンと生田さん、それからゼネラルマネージャーだったみたいだよ?」

「えっ!?」

生田さんも推薦者?
そのうえ、ゼネラルマネージャーまで…?

「ゼネラルマネージャーってさ、総帥の長男じゃんね?
可愛い弟を裏切った女(ひと)を、良く推薦出来たよね?」と、さっちゃんは言う。

裏切った…?
もしかして…生田さんと何か…?

「ねぇ、裏切ったって…誰か他に好きな人が出来たって事?」

さっちゃんは、分からないけど、そうじゃないかと言う。

「だって、凄い玉の輿だよ?
じゃ無かったら、婚約破棄なんてしないでしょ?」

確かにさっちゃんが言うように玉の輿だと思う。
SAKURAグループは、総帥の長男である、ゼネラルマネージャーがゆくゆくは継ぐらしいが、それにしても、次男と言えど総帥の息子と結婚するとなれば、勝ち組と言って良いだろう。
なのに何故…?