着物姿で現れた稀一郎さんはホント素敵で、こんな素敵な姿の彼は、誰にも見せたくないっと思うくらいだった。

「真美どう?」

「…素敵」

「真美もよく似合ってる。
この邪魔者が居なかったら、襲いたいくらいだよ?」

私も同じ気持ちよ?
恭子さん達を邪魔者だなんて言わないけど…
早く二人っきりになりたい…

「さぁ、お互い狼に変身する前に始めようか?」との桜花崎さんの言葉で、お月見開始しだ。

三段重ねの盃の大きい盃を桜花崎さんへ、中盃は稀一郎さん、そして小さい盃を恭子さんへ、それぞれの盃へ桜花崎さんは銚子でお酒を注ぎ、三人は酌み交わした。

着物姿のイケメンと美女が、月明かりの下、盃を交わす姿はとても綺麗で絵になる。

あまりの美しさに、私は携帯で写真を撮った。

「あら、ごめんなさい。私達だけ頂いて…
はい! 真美さんもどう?」

恭子さんはそう言うと、自分の盃を私へと差し出した。

「あ、いえ…
私はお酒弱いですし、皆さんを見てるだけで十分堪能してますので」

「あら少しくらい良いじゃない?
酔っても自宅だし、旦那様が側に居るんだもの?」

「でも…」

二度と以前の様な醜態は晒したくない。
自分では全く覚えていないが、あの夜は、お客様もいる前で、とても恥ずかしい発言もしていたらしい。

「やっぱり、やめておきます」

「あら残念!」

え?

「月明かりの下で、頬を赤らめ着物の裾を乱す真美さん見てみたかったんだけどなぁ?」

な、なんて事を…
恭子さんの事は尊敬してるけど、たまに何を考えてるか分からない事がある。

「上司の命令って言ったら呑んでくれる?」と言う恭子さんに、稀一郎さんは「いい加減にしてくださいよ! これはパワハラですよ? 柊真! お前もなんとか言えよ!」と二人を注意した。

しかし、桜花崎さんは我関せずと言った感じで、一人お酒を呑んでいた。