お月見当日

休みだった私達は、朝から掃除や買い出しと忙しくしていた。

「しかし迷惑な話だよな?」

「え?」

「だってそうだろ?
月見なんて何処でも出来るだろ?
態々、月見したいからって、うちに来なくてもいいだろ?」

確かにお月見なんてうちに来なくても、何処でも出来る。
寧ろ、ホテルの屋上の方が月も綺麗に見えるし、良いお酒や美味しい料理もホテルの方が用意出来る。

「折角の休みなのに、真美とイチャイチャもしてらんないじゃん?」

また、“ じゃん ” が出てきたよ?
恭子さん達の前で “ 僕 ” なんて言わなきゃ良いけど…

縁側に、ススキと団子を用意して、お酒とちょっとしたおつまみを用意した。

そろそろ恭子さん達が来る頃だと思っていたら、インターホンが鳴った。
玄関に迎え出ると、恭子さん、桜花崎夫婦は着物姿だった。

「ぅわー、二人共お着物で素敵ですね?」

「うふふ。たまには着物も良いでしょ?
真美さん達にもあるわね?」と、大きな長方形の箱を桜花崎さんより渡された。

「え?」

「私からのプレゼント。
結婚のお祝いもして無かったから?」

「え! そんなお祝いだなんて…」

恭子さんに、着て見せて欲しいと言われ、折角だからと奥の座敷で着替えて来た。

「真美さん、とても似合ってるわよ!」

「そうですか?
有り難うございます」

「生田さんも、早く着替えて来て!」と、恭子さんは稀一郎さんに言う。

「いや、折角だけど俺は良いよ!
料理も作らなきゃいけないし?」

「あら、もう準備出来てるじゃない?
ススキとお酒が有れば、お月見には十分よ?
ねぇ、柊真さん?
それにお月見に、お酒をお屠蘇で頂くなんて、なかなか趣があって良いわねぇ?」

「ああ、月見酒って言うくらいだからな、月の浮かぶ酒だけで充分だ。ツマミも要らない」

お酒は稀一郎さんの実家から送って頂いたお酒があるけど、食事は稀一郎さんが後で作ってくれる事になってた。

「それより真美さん、旦那様の着物姿見たくない?」

桜花崎さんの着物姿はとても素敵で、恭子さんと並んでると、とても絵になった。
私も出来る事なら、稀一郎さんの着物姿見たいし、恭子さん達の様に、着物姿の稀一郎さんと並んでみたい。

「稀一郎さん…私、稀一郎さんの着物姿見たいです」

「…まぁ、真美が言うなら?」

稀一郎さんは仕方ないと言って、着替えに隣の部屋へと入って行った。