彼は、何度も何度も私を愛してると囁き、身体中に愛の花弁を散らしてくれた。

「稀一郎さん…愛してる…」

「もっと言って?」

「愛してる…愛してる…あなたを愛してる」

心の底からあなたを愛してる
もう…私はあなたから離れられない
あなたを失ったら…
きっと、私は生きていけない

愛を知らず、愛する人を求めなかった私が
今は、あなたからの愛を求め
あなたを誰よりも愛してる
いつかあなたと家族をもちたい
いつか稀一郎さんの子供が欲しい

家族…?
こども…
子ども?

心も体も彼と繋がり、今まさに絶頂へと昇る中、一瞬私の頭を恭子さんの顔が過った。

「ちょ、ちょっと待って!」

彼の体を押し退けようとするが、彼は無理だと言って離れてくれない。

このままだと、危険は大きい。

「ダメ!
稀一郎さんダメ!
抜いて!離れて!」

「無理!…っ!」

昇天へと達した彼は、体を私に預け “ フー ” と息を吐いた。

嘘っ…

「ど…どうしよう…」

彼の事が大好きで、愛する彼に抱かれ幸せでいっぱいだったのに…
愛する彼の子供も欲しいと思っているのに…
今は涙が溢れてくる。

「真美?」

もし…
今、出来てしまったら…
どちらを選ぶと聞かれても
今の私には答えは出せない…
彼の子供は勿論欲しい
でも…でも…

「ごめんなさい…なんでもないの…」

「真美?
俺たちはいままで我慢しすぎた。
これからは、もっと素直になろう?
1人で抱え込まないで、なんでも話し合って行こう?」

「え?」

「ほら、涙の理由言ってごらん?」と言って、彼は指で優しく涙を拭ってくれる。

彼の優しい言葉に私は何も言えず、ただ涙を流し首を振っていた。

もし、出来たとしても
彼に選べないとは言えない。
きっと彼を悲しませる事になる。

「真美…
まだ、俺を信じれない?」

首を振る私を、彼は悲しそうに見つめる。

「じゃ、話して?」

昨夜、恭子さんからバトラーのオファーがあった事を伝えた。

「でも…稀一郎さんの子供は欲しい…」

「それは…もし、今妊娠しても…
俺たちの子供と仕事…どちらかを選ぶ事が出来ないって事?」

軽蔑される…
冷たい女だと…
私を捨てる?

彼は私の名前を呼んで、右手を下腹部へやり、モゾモゾとする。

アレ?

「コレなぁんだ?」

彼の手にある物は、液体の入った使用済みの避妊具、コンドームだった。