顔は髪で隠れはっきり見えないが、自分の勤めるホテルで見知らぬ男とベットを共にするなんて、あり得ない話。あまりのショックで、暫く言葉が出て来なかった。

「ごめんなさい…
稀一郎さん…ごめんなさい…
こんな事になって…
離婚されても仕方ないけど…
でも…もうしないから…許して…
恭子さんを選ばないで…」

「こんな事ってどんな事?」

「もう絶対、知らない男《ひと》とエッチなんてしない…?
ん?
稀一郎さん⁉︎
えっ!
なんで⁉︎ なんで稀一郎さんがここにいるの?」

「俺じゃなくて、真美は誰といるつもりでいたの?
それも、裸で?」

「…え? それは…わ、わかんない…」

「じゃ、離婚するって、なに?」

「……………」

「なんで恭子さんが出て来るの?」

「それは…」

今まで悩んでいた事や、昨夜恭子さんに言われた事を全て稀一郎さんに話した。

「じゃ、真美は俺を信じてなかったって事?
俺、話したよな?
真美だけだって!
一生愛してやるからって!
でも、信じて無かったんだ?」

「違う!違うの…」

「外では酒呑むなって言ったのに、約束破った挙句酔っ払って知らない間に男とセックスして?」

「え、でも…
知らない男《ひと》じゃなくて…稀一郎さんだったもん…」

「それは、結果論だろ!?」

彼の厳しい言葉に、私は何も反論出来なかった。

「…はい…すいません…」

「恭子さんも恭子さんだ!
真美が酒弱い事、言って有ったのに!
…とに、あの夫婦ときたら何考えてるのか!?」

「え?
夫婦って…恭子さんって、もう結婚してるの?」

稀一郎さんの話だと、恭子さん達は既に籍は入れているとの事だった。ただ、以前色々あったことから帰って来て早々、大大的に式を挙げるわけにもいかず、先に籍だけを入れたらしい。

えー!
私、なに悩んでたの?
馬鹿みたい…

「真美、随分欲求不満だったみたいだな?
真美がこんなにも好きもんだとは知らなかったよ?」

「え?」私、なんか言った?

「ちゃんと真美の欲求不満解消しないとな?」

「えっ! いえ、もう大丈夫です。
ワンコロも待ってますから、帰らないと…」

「ワンコロの事は大丈夫だ。柊真に頼んである」

「あっ、でも仕事…」

「今日は、休み!」と言って覆い被さってきて、彼は何度も私を抱き、私が希望したと言って、身体中にキスの痕を残した。

わたし…
なに口走ったんだろう…

聞くのが怖い。