恭子さんの洞察力は凄いもので、私が恭子さんと稀一郎さんを疑ってる事に気付いていたのだ。

うっわー
この人本当すごい。
稀一郎さんとは、ホテルではほとんど顔会わせないから、ホテルの誰にも気づかれないと思ってたのに…
まさか、当の恭子さんに気づかれるなんて…

「すいません…
顔には出さない様にしてたのに…」

「ううん。
いつか、話した方が良いと思ってたから…
私、ホントに生田さんの事好きだったよ?」

「え?」

「ホテルマンになって、生田さんの様になりたい。生田さんに褒められるホテルマンになりたいって思ってた。
以前色々あって、ホテルを辞めようと思った時期が有ってね?
そんな時、生田さんにホテルを辞めるなら、結婚して欲しいってプロポーズされたの…
正直嬉しかったけど…違ったんだよね?
なんかね? ホテルマンを辞めて結婚して欲しいって聞こえたの…
勿論、辞めようと思ったのは私だけど…
多分、私がホテルマンを辞めないって分かってたから、生田さん、プロポーズしてくれたんだと思う。
君が望んでるモノは違うだろって?」

恭子さんは「彼、良い人だよね?」と稀一郎さんを褒めてくれた。

私もそう思う。
稀一郎さんは、誰からも信頼され本当に良い人で、私の愛するステキな旦那様だ。
信じていたはずが、彼に対する気持ちが期待に変わっていたのかもしれない。

稀一郎さんなら
愛してくれる。
幸せにしてくれる。

愛は一方的に貰うモノではないのに…
幸せは二人で築くものなのに…

恭子さんが言うように、期待ではなく信じる様にしよう。何があっても…

「あ、ねぇ?
真美さん、生田さんの着物姿見たことある?」

「いいえ?」

「生田さんの歩く姿って、ぴんと一本筋が通った様に真っ直ぐな姿で歩く後ろ姿って、力強くて綺麗でとても優雅な歩き方すると思わない?
きっと着物着せたら素敵だと思うのよね?」と恭子さんは言うと、“ 絶対これを使わない手はない ” とぼそりと言った。

「恭子さん?」

「あ、ごめんごめん。気にしないで?
ちょっと仕事の事で、生田さんには無理言っちゃうかもしれないけど?」