見たことのない彼女の険しい顔に、要らぬことを言ったと悟った私は、思わず後ずさりしていた。
「真美さん、あなたには…その話には触れられたくなかったわ」
え?
「生田さんが、私を思っての事なら、答えない訳にはいかないわね?
そうねぇ…結婚式か…
まだ、私迷ってるのよ?」
え?
稀一郎さんが、恭子さんを想っての事…
どういう事…?
「迷ってるって…
桜花崎さんと結婚したくないって事ですか?」
「んー…人の本心なんてね?
口に出さないところにあるものよ?」
それは…
どういう意味…
「生田さんって、ホントいい人よね?
あの頃と全然変わってなくて、私ホント嬉しいかったわ!
体つきも全然変わってないわよね?」
え?
体つき…
稀一郎さんと体の関係があったって事…
恭子さんが付き合っていたのは、桜花崎さんじゃないの?
稀一郎さんとも付き合ってたの?
「彼ね? 以前もよく私の事気に掛けてくれてね?
彼とは…
何気ない事を話して笑ったりして…うふふ…
あの頃が懐かしい。
彼ね? 当時から王子様なんって言われて人気あったから、彼と話す時はとても気を遣ったのよ?
やっかみ買って仕事し辛くなると困るじゃない?
でも、今は同じ場所に居ないから、そんな心配もいらないわよね?」
恭子さん…
この人…なに言いたいの?
まるで、稀一郎さんと何か有ると
ほのめかしてる…?
でも、なんの為に?
まさか…私達を別れさせる為…?
「あ、心配しないで?
彼には必要以上のもの求めないし、あなたにも、迷惑かけないから?
それから、まだ、誰にも言わないで欲しいんだけど、私、結婚し…したくないの」
結婚したくない…?
なぜ?
桜花崎さんの事が
忘れられなくて、戻って来たんじゃないの?
桜花崎さんの事が
好きで、戻ってきたんでしょ?
だから、桜花崎さんのプロポーズ受けたんじゃ…
もしかして…

