食事は無駄にしたくなく、食べはしたが、その後の、彼の質問にも問い掛けにも一切応えず、車で送ると言われても、無言のまま私は駅へと向かった。
その日以来、顔を合わせても会釈するだけで、仕事以外の話は一切していない。
勿論、屋上へも行ってない。
「真美、いい加減何があったか話しなさいよ!」
「何もないって!」
「あれで、何もないわけないでしょ?
今まで、毎日出迎えてたマネージャーが、顔出さなくなったんだよ?
何かあったって思うのが普通でしょ?」とさっちゃんは言う。
「何も無いのが普通だと思うけど?
うちは社内恋愛禁止だし、忙しいマネージャが、毎朝出迎えて遊んでる方が可笑しかったのよ!」
「ねぇ、ホント何も無いの?
もし、なんかあったなら、私に話してよ?」
「有難う。
でも、なんでも無いから心配しないで?
ねぇ、さっちゃんって、深田恭子さんって知ってる?」
「深キョン?」
「違う!
前にここに居た人で、生田さんが、凄く優秀だったって言ってたから、ちょっとどんな人か気になって…?」
「あーなんか前に聞いた事あるわ!
あの深田恭子と同姓同名の人が居るって?
でも、どんな人かまでは知らない。
そんなに気になるなら、私が先輩に聞いといてあげるよ?」と、さっちゃんは言ってくれた。
「ん… やっぱいいわ!」と、私はさっちゃんの申し出を断った。
だが、さっちゃんの情報収集は早かった。
「分かった!分かったよ!!」
仕事終わり更衣室で着替えをしてると、さっちゃんが活き良い良く更衣室へ入って来た。
朝、さっちゃんへ話した事など、すっかり忘れていた私は何事かと驚いていると、さっちゃんは大きな声で話し出したのだ。
「そんなに騒いでどうしたの?」
「生田さんの彼女…フガフガ…」
今朝の事を思い出した私は、慌ててさっちゃんの口を塞ぐと、早くご飯食べに行こうと言って、そのままさっちゃんを更衣室から連れ出した。
だが、着替えをしてないさっちゃんに気づき、話は後で聞くから、今はなにも喋らず着替えて来るようにと言った。
着替えを済ませたさっちゃんは、なぜかニヤニヤしながら、更衣室を出てきた。
そして、「今日は、奢りだよね?」と顔をニヤつかせるさっちゃんに、わかったとだけ私は言う。
はぁ…
さっちゃんに聞くんじゃなかった…

