どうなるか分からない中、今、悩んだところで辛いのは変わらない。
こういう事が有ると、仕事に支障が出るからと社内恋愛は禁止されてるのに、会社のルールも守らず結婚した私が顔に出していてはマズイ。
桜花崎さんにまで迷惑かけてしまう。

頑張れ!

両頬を叩き、自分に渇を入れ持ち場についた。

だが、いくら自分に渇を入れ平常心装っていても、ベルである以上、フロントにいる稀一郎さんとは、嫌でも顔を合わせなくてはいけない。

「5018号室へご案内お願いします」

稀一郎さんに差し出されたカードキーを受け取ろうとしたら、稀一郎さんの手に力が入り、カードキーをはさんで二人の手が一瞬止まった。
きっと、私の様子がいつもと違うと気付いたのだろう。

「5018号室ですね?畏まりました」

何でもなかった様に、カードキーを受け取ると、私はお客様を部屋へとご案内する。
同じ様な事を何度か繰り返していると、稀一郎さんから、事務所へ来る様に言われた。

まさか、今ここで宣告される?
今、宣告受けたら、絶対仕事にならない。

「すいません。今日友田さんが休みなので、今は抜けられません」

「分かった。じゃ、休憩の時に私の部屋へ」

「…はい」