桜花崎さんの暴露に、稀一郎さんは慌てふためき、私に弁解していた様だが、私の耳には何も入ってこなかった。

プロポーズ…
稀一郎さんが…
稀一郎さんが…他の人に…
稀一郎さんが深田さんにプロポーズ…?
稀一郎さんが、私以外にプロポーズしてた…

「…真美? 真美! おい真美!!」

「え? あ? うん。
なんか言った?」

「大丈夫か? 柊真が帰るって」

「え?あ、はい。お疲れ様でした」

何がお疲れ様なのか、ただ言葉だけが勝手に出てた。

洗い物をしてくれると言う稀一郎さんの代わりに、帰ると言う桜花崎さんを、私一人が見送りに玄関へと来てた。

「真美さん、大丈夫?」

心配する桜花崎さんへ、ハイと返事しつつも不安と疑問を言葉にしていた。

「あの…プロポーズって…」

「ん…プロポーズの話、そんなに気になる?
でも、真美さんには分かるでしょ?」

私なら分かる…?
なにを?

桜花崎さんは、それ以上は何も言わず、ご馳走さまとだけ言って帰って行った。

稀一郎さんは、桜花崎さんが深田さんの事好きな事は知ってたんだよね?
なのに…稀一郎さんは、深田さんにプロポーズしたの?
親友で、戦友の大切な人へ…

さっき見せた、稀一郎さんの寂しそうな顔って…
深田さんが居なくなったのが原因?
今はどう思ってる?
まだ、気持ち残ってる?
もし、いま深田さんが帰って来たら…

どんなに考えても、稀一郎さんの気持ちは分からず、桜花崎さんを見送った後、そのまま二階の自分の部屋へと入りベットへ横になった。

「あれ? 真美具合悪い?」

戻って来ない私を探したのだろう。
暫くすると、私の部屋へ稀一郎さんがやって来た。

「ごめん…ちょっと疲れた…」

稀一郎さんは、ベットの端に腰掛けると、私の名前を呼び頭を撫でてくれた。

「柊真の言った事、気にしてる?」

気にしてる。
凄く気になる。
でも…聞けない…
もし、今でも彼女を想ってると言われたら…
私はどうなるの…?

また、捨てられる?
父の様に、好きな人が居るからと…