「え?
深田さんが日本を離れる時、稀一郎さんは何か言って…あげたの?」

「いや、彼女が日本を離れる時、婚約が破談になったなんて知らなかったから、何も言ってないよ?
俺は、その場をどう収めるかで、頭の中いっぱいだったから…
寧ろ、彼女が一言も相談してくれなかった事に、悔しかった。」

深田さんが日本を発った日は、婚約披露パーティーの当日で、パーティーの準備をしていた稀一郎さんは、主役の二人が現れない事に、半ばパニックを起こしたと言う。

「えっ! 当日だったんですか?」

「彼女もギリギリまで悩んだんだと思うよ?」と稀一郎さんは苦笑する。

いや、笑えないでしょ?
当日にって…

「じゃ、後始末は大変だったんじゃ…」

「ああ、大変だったけど、弟の後始末するのは俺の役目だしね?」と言って笑う桜花崎さん。

稀一郎さんまでも「流石の俺も、あの時は焦ったわ!」と大笑いしてる。

何がそんなに可笑しいの?
笑い事じゃ無いと思うけど…

「でも、真美さんとしては、彼女に帰って来てもらわない方が良いんじゃない?」

え?

「どうしてですか?」

私は深田さんが戻って来てくれたら、仕事を教えて欲しいと思ってる。
許されるなら、マンツーマンで鍛えて欲しい。

「彼女が帰って来たら、気を揉む事になるかもしれないよ?」

「柊真、お前余計な事言うなよ?」

稀一郎さんは、なにやら桜花崎さんに口止めしてる様で、とても気になる。

「稀一郎さん?
何か私に知られたらマズイ事でも、有るみたいですね?」

「別に何も無いよな? 柊真!!」

その威圧的な言い方、絶対あるでしょう?

「ああ、無い無い。
真美さんに知られてマズイ事なんて、何も無い筈だよ?
稀一郎が、彼女にプロポーズした事以外は?」

稀一郎さんが深田さんに…プロポーズ??