「桜花崎さんは、深田さんの事どうするんですか?」

「どうするも何も、俺が決める事じゃないからね?」

そりゃー、彼女の気持ち次第だろうけど…
でも…

「そんなの…そんなの卑怯です!」

「え?」

「だってそうでしょ?
弟さんに奪われそうになった時も戦わず、深田さんが日本を発つ時も、何も言ってあげてないんですよね?」

女性の5年は、同じ5年でも男性が思ってるより、はるかに長い。
況してや30歳を過ぎた女性にとって、どれだけ長い時間か…
いくら自分が望んで海を渡ったとしても、好きな人に待ってるとも言われず、帰って来いとも言われないなんて…

「好きなら…いまでも彼女を愛してるなら、帰って来いって言ってあげるべきです!」

私なんかが、桜花崎さんにこんな事言える立場じゃない事は知ってる。
稀一郎さんと結婚しなければ、こうして一緒に食事する事も、プライベートの話を話す事すら出来ない存在だと言う事は百も承知。
それでも、敢えて言いたい。

「真美さんは強いね?」

「え?」

「男ってさ?
女性が思ってるほど強く無いんだよ?
5年も離れてれば、彼女の気持ちが変わってる可能性だってある。
特に俺達の場合は、穰の事もあったからね?
ラウリンと一緒になる方が、彼女にとって幸せかもしれない。
今になって、俺が出る事で彼女に要らぬ迷いを与えかねない。
ラウリンは、男の俺から見ても良い奴なんだ。
もし、俺の事を忘れていないなら…
だから、俺からは何も言わない。
彼女の幸せを選ぶのは、彼女自身だと思うから」

そんなぁ…

「柊真は怖いんだよ。彼女に拒否られるのが。
相手が相手だしね…
真美、男の方がナイーブだったりするんだよ?
俺も、真美に露骨に避けられて、めっちゃ沈んだしね?」と稀一郎さんは苦笑する。

「勿論、何方を選ぶかは彼女自身だと思います。
でも、待ってる事くらい伝えてあげるべきです!じゃないと…」深田さんが可哀想…

「真美大丈夫だよ?
彼女はきっと帰ってくる。
彼女はSAKURAホテルが大好きだったから」

「稀一郎も居るしな」と桜花崎さんは言う。

え?
稀一郎さんとどんな関係が…あるの…?