ドクン ドクン

心臓の音が耳に響く。

(これは恋の神様がくれたチャンスなのよ)

憧れていた副社長とディナーをしているシチュエーションに、
気持ちは昂る・・・

ナイフで切り分けたお肉は、赤ワインで2時間以上煮込んだもので、
このレストランで一番に人気のもの、

柔らかくて、最高に美味しいはずなのに、
緊張でまったく味が分からなくなっている。

会社で大きなプロジェクトとなっている、複合施設の建設が、
ほぼ終了となり、最後のチェックに訪れた。

副社長の秘書は室長であり、本来私は同行する予定ではない、
ただ、昨日の夕飯が当たったと室長が寝込んでしまい、
急遽秘書課で手が空いていた私が、同行する事になったのだ。

(室長には申し訳ないけど、こんな機会二度とないかもしれない)

副社長を見て、笑顔を向ける、
堂々を顔を見れる事に、それだけで嬉しくなる。