「どうかしましたか?」

「いえ、とってもおいしいです」

そんな考えは押し込めるように笑って見せた。

「今度は、恵巳さんの手料理を食べてみたいです」

「こんなにおいしい料理をいつも食べてる拡樹さんに手料理を?」

目の前に並んだコース料理。こんな贅沢なディナーを食べているというのに、庶民の手料理を所望するとは何事かと心がざわついた。

それでも、拡樹は手を緩めない。

「恵巳さんの手料理だから、食べたいんです。恵巳さんの作った料理なら、なんだって食べますよ。例え砂糖と塩を間違えていようと、僕は黙って…」

「フォローの仕方が違うと思いますよ!…もう少し、期待してもらってもいいかと。こんな、高級なものは作れませんけど、家で作ってる普段の料理で良ければ…」

「本当ですか?やった。
では、いつにしましょう?いつなら空いてますか?すぐに予定を入れましょう」

ぐいぐい詰め寄ってくる拡樹に身を引いて返すが、日程を決めるまでこの攻撃には終わりがないようだ。