「なんでこんなに必死になってんの?またフラれたの…?」

本人に聞いても無駄だと察した恵巳は、同じく若干引いている2人に尋ねた。

「宮園さんがお金持ちだって知ってから、ずっとこの調子なのよ。私も玉の輿に乗りたいって言って、恵巳ができるなら私にもできるって妙な自信つけちゃって。玉の輿と言う幻想に取りつかれた化け物よ」

「ひーどーいー!私だってイケメンでお金持ちの婚約者が欲しいのー!」

ジタバタ騒ぐ由紀子に苦笑いを向けている3人。恵巳はイケメンでお金持ちか、と心の中で繰り返した。ここまで欲望に忠実だと、いっそ清々しい。

そんな由紀子は一旦置いておき、話の中心は、最近結婚を発表した伊織へ。

「結婚ってなると、そんな条件だけで決められないじゃん。伊織はなんで結婚しようと思ったの?」

「私もそれ気になる!今の歳で結婚とかまだ考えられないもん。遊びたいし、仕事も頑張りたいからね。伊織だって仕事してるじゃない?それでも結婚に踏み切れた決めてって何なの?」

「決め手?難しいな…」

うーんと唸り、右に左に首を傾げ悩んでいるが、なかなか思いつかないらしい。

「そこ、すぐに出て来なくてもいいの?」

「そんなこと言われてもな。私たちって、高校一年生の時から付き合ってるでしょ?6年も付き合ってたら、喧嘩もたくさんしたし、嫌いなところもいっぱい見えてくるんだけど、それでも別れたいとは思わなかったんだよね。

そしたらもう、いずれ結婚するんだろうなって考えるのよ。

たぶん、これといったきっかけなんてなかったんじゃないかな。家族になるっていうのが私たちにとって自然な流れだったってだけで」

おっとりとした口調で、すごいことをさっらと言うものだと恵巳は心の内で感心していた。

家族になりたいという感覚がどういうものなのか少し考えてみたが、自分の中には似た感覚は見当たらなかった。