「なんだ!どんなに金積まれたところで、うちの保管品は渡さんぞ!帰れ帰れー!」

受付にいた父は、まるでプラカードを掲げるデモ団体さながらの大声で受けて立った。泰造を目の前にしたときから冷汗が止まらないようだが、口では威勢よく対応する。だが、そんなことで立ち去る泰造ではない。

「ついに銀行からの融資も打ち切られたようですね。今日も、まだ営業時間だというのに、客の姿は見当たらない。本当に続ける意思があるのですか?」

そう言って、がらりとした館内を一通り見渡した。

「あ、当たり前だ。どんな手をつかってでも、この場所で交流館を続ける。あんたなんかに譲ってたまるか!わかったらさっさと帰るんだな」

シッシッと追い払う仕草を見せるが、泰造は一歩も動じず、その場で父から目を逸らさない。その圧に、なにも言われなくても首を縦に振ってしまいそうになる。小さな子どもなら泣いてしまうだろう。

「取引きしませんか?乗っていただけるなら、融資は惜しみませんよ」

「何度も言ってるだろ。ここの作品はやらん」

「こちらの展示品ではありません。
融資の代わりに提供していただきたいのは…」

交流館にある展示品や、蔵の保管品でもなく、泰造は予想外なものを要求してきた。

宮園泰造はかなりのやり手だ。目を付けたものに対しては、決して手を緩めない。自分のものにするまでは。