「はは、そうですか。
いやー、すいませんね、お邪魔して。
めぐを貰ってくれる物好きがいるって聞いたんで、会ってみたかったんですよ」
ポケットに手を突っ込み、どこぞの輩のように大袈裟に笑い飛ばしている。だが、そんな蓮を見て、きょとんと澄んだ目をしている拡樹。
「ん?彼女は素敵な方ですよ。他の男性が彼女の魅力に引き込まれてしまわないか、いつも不安なんです」
勢いよく拡樹を見たのは恵巳の方だった。火花が散っていると感じていたのは気のせいで、拡樹はただ蓮からの敵意満載の挨拶に答えていただけなのかもしれないと、気づき始めた。
蓮も、そんな言葉が信じられないという目を向けている。そこには、若干の奇妙なものを見る目でもあった。
「本気で言ってるんですか?それとも、そう言わないとあとで大変な目に合うから心にもないことを?」
「心の底から思ってますよ。恵巳さんは素敵な女性です」
冗談でもなければ、蓮に対する嫌がらせでもない。拡樹は至って本気だった。
「…、変な奴だな」
丁度仕事の電話が入り、まだ言い足りなかったようだがその場を後にした。どうにか大事になる前に治まったはいいが、蓮がこれで終わるとも思えず、恵巳はとても一件落着とは思えなかった。
「なんだか、変わった方ですね」
素直にそんな感想を述べる拡樹に、口にはしなかったが、心で思った。どっちもどっちだ、と。
こうして、波乱の温泉旅行は幕を閉じた。またいつもの日々に戻ってしまうのかと、少し残念に思っていた恵巳だったが、日常はそう簡単に戻ってきてくれなかった。
いやー、すいませんね、お邪魔して。
めぐを貰ってくれる物好きがいるって聞いたんで、会ってみたかったんですよ」
ポケットに手を突っ込み、どこぞの輩のように大袈裟に笑い飛ばしている。だが、そんな蓮を見て、きょとんと澄んだ目をしている拡樹。
「ん?彼女は素敵な方ですよ。他の男性が彼女の魅力に引き込まれてしまわないか、いつも不安なんです」
勢いよく拡樹を見たのは恵巳の方だった。火花が散っていると感じていたのは気のせいで、拡樹はただ蓮からの敵意満載の挨拶に答えていただけなのかもしれないと、気づき始めた。
蓮も、そんな言葉が信じられないという目を向けている。そこには、若干の奇妙なものを見る目でもあった。
「本気で言ってるんですか?それとも、そう言わないとあとで大変な目に合うから心にもないことを?」
「心の底から思ってますよ。恵巳さんは素敵な女性です」
冗談でもなければ、蓮に対する嫌がらせでもない。拡樹は至って本気だった。
「…、変な奴だな」
丁度仕事の電話が入り、まだ言い足りなかったようだがその場を後にした。どうにか大事になる前に治まったはいいが、蓮がこれで終わるとも思えず、恵巳はとても一件落着とは思えなかった。
「なんだか、変わった方ですね」
素直にそんな感想を述べる拡樹に、口にはしなかったが、心で思った。どっちもどっちだ、と。
こうして、波乱の温泉旅行は幕を閉じた。またいつもの日々に戻ってしまうのかと、少し残念に思っていた恵巳だったが、日常はそう簡単に戻ってきてくれなかった。


