「だな。あ、それとさ、この間言ってた婚約のことだけど…、」

蓮の言葉が止まった。視線は恵巳の背後に合わせられている。嫌な予感がした。

まずい、と顔に出るほどに。

「宮園拡樹…。まさか、お前ら一緒に…?」

拡樹を前に、先ほどまでの雰囲気は一変し、蓮は睨みをきかせ、少しも視線を逸らそうとしない。拡樹は拡樹でその視線に答えて、先に逸らすことはしない。
まだ特に何も話していないというのに、2人の間に火花が散った。

「あの…」

こうなると、幼いころから喧嘩っ早く血の気が多い蓮は黙っていることなんてできるはずもない。

「温泉街になんか連れ出して、ポイント稼ぎですか?」

「いきなり喧嘩吹っ掛けないで。

拡樹さん、こちら高校の同級生で、今は鑑定士をしてる山田蓮。偶然通りかかったそうです。すぐ仕事に行かなきゃいけないんだよね?」

慌てて場を治めようと果敢にも2人の間に入る恵巳。だが、そんな恵巳の頭上で引き続き火花は散り続けている。

「初めまして、宮園拡樹です。既に聞いているかもしれませんが、彼女の婚約者です」

意図して言ったのか、天然が炸裂したのか、そのワードは、蓮にとって攻撃力が高すぎた。