「そんなに怒らないでください。宿に付いたら、2人になれますから」

頭にぽんと掌を置かれた恵巳は、急なことにすっかり心拍数が上昇する。慌ててしゃがんでその手から距離をとった。

「そういうことで怒ってるんじゃないんですけどね」

肩を落とす恵巳に、恵巳しか見えていない拡樹、パンフレットを見て計画を練っている両親。
こうして、両親付き添いの温泉街デートは幕を開けたのだった。