「それ俺のじゃねーの?

万年おばさんに尻に敷かれてる家に帰りたくねーからって、客に絡んで店閉めさせないようにしてるくせに。結婚語れるのかよ」

「相変わらず生意気だなー。若い奴はこれだから行けねーよ。尻に敷かれてるくらいがちょうどいいってもんなんだよ。

恵巳だっていつか鬼嫁になんだからよ。そんときに歯向かったら、余計に怒られんだぞ」

哀愁漂う店長の口調に、2人は顔を見合わせた。

「鬼嫁になんかならないし、まだ嫁になる気も…」

あ…、と微妙な空気が流れる。まだ嫁ではないという言葉に引っかかった恵巳。自分から口走っておきながら、余計なことは言うなと蓮に視線で伝え、枝豆に手を伸ばした。

そんな細かいやり取りなど店長は全く気付かず、連は肩を組まれている。

「そんなの、蓮が男気みせたら一発だろ!なぁ?」

豪快に笑う店長にたじたじな蓮と、これ以上話が膨らまないようにと、無言でひたすら枝豆を食べ続ける恵巳。


ついこの間までは独身同士でわいわいやっていたのだから、周りからこの2人は結婚でもするのだろうと思われてもおかしくなかった。

男女の友情を育んでここまできた2人は、お互いに思っているところはありそうだが、決してそれを口にはしてこなかった。言葉にできるほど、単純なものではないからかもしれない。

だから、2人の関係性を表すとすると、友人となるのだった。