「お前って、スポーツマンで、クラスの中心にいるような男を好きになってきたろ。宮園拡樹は文系色が強くて、クラスの隅っこで教科書を読んでるようなタイプじゃねーの?

それに、博物館の事務員から聞いたんだけど、従業員の女性に食事に誘われても、今日は1人でいたい気分だからって言って断ってるらしいぞ。必要以上に他人に干渉しようとしない、交流もしない。かなり陰気な性格だって聞いてる。

どう考えても、めぐと合わねーよ」

蓮は拡樹を毛嫌いしていた。 活発で感情的になりやすいところもあるが熱い男の蓮と、柔らかい人当たりで思考のつかみにくさがある拡樹は、見た目も中身も正反対。

「大体、拡樹さんと会ったことないんでしょ?」

「直接話したことはないけど、良くない噂は山ほど知ってる。
あの家の人間は自分たちの利益の為に動くんだ。あの男に惚れたとたん捨てられるのは目に見えてる。騙されてからじゃ遅いんだって。

そもそも、宮園に女はいないのか?あいつが婚約のことをどう思ってるのかもよくわからない。
どっかに相手がいてもおかしくねーぞ」

「相手、か…」

親が決めた婚約という以上、拡樹に思いを寄せている人がいるかもしれないと、考えたことが無いわけではなかった。だが、それは自分のなかで保留にしようと決めていた。

なのに、こうして人から言われると、はっきりさせた方が良いような気もしてくる。初めて会った時の拡樹の顔がちらついた。