「ね?ここまで話したら信じないわけにもいかなくなってきたでしょ?」

一応恵巳からの説明を飲み込んだ蓮ではあるが、納得できたかというと話は別なようであった。最後まで黙って聞いていられたのが不思議なくらいに、何度も口を挟もうとしていた。

「なるほど…、なんて言えるか!いきなりすぎるだろ!

交流館を守るためとはいえ、婚約はさすがに行き過ぎだ。しかも相手があの宮園泰造の息子?いやいや、何の冗談だよ。ってか、何お前も受け入れてんの?」

「受け入れてなんかないよ。
ただ、拡樹さんは悪い人じゃないみたいなんだよね。会ってみて、正直印象は変わった」

庇ったつもりはなかったが、蓮は怪訝そうな表情を浮かべた。

「惚れてるみたいな口ぶりだな」

先ほどまでの攻撃的な口調は鳴りを潜め、落ちたトーンと視線でつぶやいた。

「惚れるもなにもないわよ。まだ2回しか会ったことないんだし。

正直、どうしたらいいかわかんないんだよね。いや、どうしたいのかわかんないっていうのかな」

先日、拡樹と会ってから、婚約に対する思いが動いていたのは確かだった。かと言って、はっきりとしない自分の気持ち。だからこうして連に相談を持ち掛けたのだった。

蓮の答えははっきりしていた。一貫して、「迷う余地なんてない。断ればいい」。
宮園泰造の息子だということを考えれば、その反応も当然といえば当然だった。