「1時間あったので、会えないかなと思いまして。それに、早く話もしたかったですし」

「2人だと緊張するって言ってたじゃないですか」

「今も緊張してますよ。

それにしても、古き良き交流館ですね。なんだか緊張も和らいできます」

ぐるっと館内を見渡すと、にこりとほほ笑んだ。
素敵な笑顔なのに、宮園泰造の息子というところが引っかかり、素直には受け取れなかった。

「それは、褒め言葉、ですか?

宮園さんのところの博物館のほうが立派だし、お客さんも多いじゃないですか。現にここは、あなたのお父さんに融資していただかないと潰れてたくらいです」

どう考えたって、歴史博物館と並べるには恥ずかしいくらいの規模の小ささ。歴史の長さに誇りは持っているものの、それを威張って言えるほど、強靭な精神を持ってはいなかった。

「僕、小さいころから、刀が好きなんです。うちの近くに小さな博物館があって、その横では職人さんが日本刀を鍛錬してるところを見学もできたんです。学校帰りに寄り道して、閉館するまでいろんな刀を見てました。
なんだかここは、そのときの博物館に似ています。

その博物館も、父の組織に吸収されてしまいました。今は別の博物館で仰々しく飾られていると聞いています。おかげで人の目に触れる機会も増えたそうなんですが、僕は、前の方が好きでした。
だから、ここは父に負けずに残していただきたい」

思いもよらない言葉だった。もしも宮園泰造の耳に入ったら、制裁を免れないのではなかろうかと心配になった。