トンネルの中に一歩足を踏み入れると、淡い紫の光に包まれる。

この寂しさと美しさが共存する光景を前に、交流館の壁に飾られたとある歌を思い出していた。

それはとても切なくて、初めて読んだ時には心が締め付けられた恋の歌。


「この花が散るように、私の想いも散っていくのならこんなに苦しむことはなかったのに。
何度季節が巡っても、何度花が咲き、枯れようとも、あなたへの想いは消えることなく、日に日に強くなっていくばかりなのです。

だから早く、あなたが攫っていった私の心を返していただけないでしょうか」

まるで語り掛けるように、紫色の小さな花びらに手を伸ばした。

傷ついた心が、少しずつ癒されていくような、そんな温かみを感じた。
さりげない優しさが、どことなく拡樹と重なり、自然と涙がこぼれた。