翌日、カレンダーの丸をじっと見つめては溜息をつく娘を、両親は心の底から心配していた。

ただし、父は座った椅子から立ち上がることはできずにいた。梯子を持ち上げたときに動けなくなった後、ぎっくり腰の診断を受けていたのだった。

「ママ、恵巳がさっきからカレンダーに向かって呪文唱えてるんだけど。どうしたのかな」

「昔から和歌に向かってぶつぶつ言う子ではあったけど、ついにカレンダーにまで話しかけるようになったのね。あの丸、今日何かあるのかしら?」

「今日か。何かあったか?」

そんなとぼけた様に空中を眺める父をすごい勢いで睨み返した恵巳。

「お父さんがぎっくり腰になったから、私が定例会に行かなきゃいけなくなったんでしょ!もー、あれくらいで腰やるなんて、どうなってんのよ」

「あぁ、そうだった。定例会には拡樹君も来るかもしれないから、そんな調子なのか。もう吹っ切れたって言ってたじゃないか」

「そんなこと言ったって、簡単に忘れられるはずないのよ。

今まで、褒められても告白されても、全部捻じ曲げて受け取ってたこの子が、拡樹君と出会ってから感情豊かになったのよ。甘えられるようになったのね。

自分を変えてくれた人って、自分にとって大事な人でしょ?
私にとってのパパみたいに」

「ママ!僕は今感動してるよ!」

「また勝手なこと言って…」

ギロリと恵巳から睨まれていてもお構いなしに熱い抱擁を交わす。腰を庇いながら。