「本当にあるの?そんな火鉢なんて都市伝説なんじゃないの?」

「いや。父さんの父さんから見せてもらったことがあるから確かにどこかに眠っているはずなんだ。

もしそれが公になれば、歴史が変わるんだ。それくらい、貴重なものなんだよ」

「いまいち信じられないんだけど。もう、私疲れたー。お母さんも、もう行こう」

「そうね。ここのどこかにあるならそれでいいわよね」

疲労がたまった恵巳と、最初から特に興味のない母は、すぐさまに日差しの下に出た。

「うーん。ママにそう言われたらそう思えてきたぞ!どうせ展示することもできないんだから、眠らせておけばいいのか!なんだ、もっと早く言ってくれよー」

そう言ってゆっくり梯子を下りる父。その梯子をもち上げたとき、父の動きが止まった。

「ぁ…。動かない」

そんな虚しい声が蔵の中にこだました。