春を迎えても交流館の勢いは衰えていなかった。入院から完全復活を遂げた恵巳は、今日も朝から活動していた。と言っても、交流館が休みの今日は、小関家の3人で揃って蔵を整理しているのだった。

「たしかこの辺にあったと思うんだよな」

「なんでそんな大事なものどっかにやっちゃうのー?」

「大事なものだから盗まれないように隠してたんだろ」

恵巳から隠し財宝について聞かれるまで、そんなものがあることをすっかり忘れていた父。恵巳にも話しておこうと蔵に来たはいいが、1人では見つけきれず、家族全員で大捜索する羽目になったのだ。

「ねぇ、これじゃないかしら?」

母が手にしているのは群青色の細長い花瓶。

「ママー、僕らが捜してるのは火鉢だよ」

「どれも一緒に見えて困るわねぇ」

火鉢と言われてもイメージができていない母もともに、それから1時間探し続けたが、見つかることはなかった。母と恵巳は諦めモードに入っていた。