「だよなー」

勢いよくしゃがみ込んだ蓮。

「わかってた。わかってたけど、言わずにはいられなかったんだよな。自分勝手な告白なんかしてごめん。
めぐには、俺よりもあいつよりもふさわしい男がいるよ。これからも、良い関係でいようぜ」

そこに、ちょうど両親が戻ってきた。蓮と話しだしてしまったため、恵巳は何も返せなかった。

「じゃ、俺はこれで。めぐ、もう無理するなよ」

うん、と小さく頷いた。その力ない後ろ姿にかける言葉など見つからなかったからだ。



病室を出た蓮は、立ち止まることなく出口へと歩いていた。

「はぁ。…わかってたとはいえ、なかなかきついなー」

いつものらりくらりと自分の感情からも目を背けていた蓮が、上を向いて吐き出した本音。

わかっていたとは言いながら、わずかな望みをかけていた。それが打ち砕かれた今、大きく息をついた。そして今までよりも少し大きい歩幅で歩きだした。